冬場の伏兵
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


新年も松の内のころまでは
それぞれが籍を置く世界での何やなんやに引き回されもし、
やっぱりお忙しかったらしい三華様がたで。
それが落ち着いたかと思ったら学校が始まっており、
寒い中を何とか相前後して到着した教室にて、
腰高窓の下へ連ねる格好で取り付けられた
いかにも古風なオイルヒーターに手をかざしつつ、
その窓から眼下の校庭を見下ろしておいで。

 「冬休みももうちょっと長くならないかしらね。」

 「…、…。(頷、頷)」

 「せめて風の冷たさが穏やかになるまで、とかね?」

日中の気温もとうとう一桁が通常運転と化してる一月は、
受験生には正念場だが、
それ以外の学年には微妙に間延びした頃合いだともいえ。
朝一番に布団から出るのが大変だし、
玄関ドアから外へ踏み出すのも、
うんと踏ん切りつけるほど、
ちょっとした気合いが要ったりして。
とはいえ、

 「まあ、ガッコがなくともお出掛けはするんですが。」

 「…言えてる。」

インフルで学級閉鎖とか願い下げですもんねと、
顔を見合わせ、ふふふvvと朗らかに微笑うお嬢様たちでもあり。
そういう現金なところはイマドキなお三方でもある辺り、
保護者の皆様に言わせりゃあ、
やっぱり ちゃっかりしているというか、
寒かろうが暑かろうが、こっちは少しも気が休まらぬというか、なんて。
レベルに差はあれ、似たような渋いお顔になってござるそうだけど。(笑)

 「昨日の寄り道で見つけた
  ビジューつきのバレッタ、
  アメジスト紫以外の色違いも あるそうですよ。」
 「え? ホント?」
 「♪♪」
 「はい、ネットで見つけましたvv」
 「わvv 青とかピンクとかもあった?」
 「はいなvv」

じゃあ、色違いで揃えよっか?なんて、
そこは“転生びと”なことも関係なく、
年相応の何てことのない話を繰り出しておれば、

 「……あ、ちょっと待って。」

ひなげしさんが あとの二人へ断りを入れ、
ポケットからこそりとスマホを取り出したので、

 「…お。」
 「…♪」

こらこら久蔵殿、その♪は何だ、♪は…と、
七郎次がついついツッコミを入れたれど。
そんな彼女も微妙に口角が上がってる辺りがご同輩。(苦笑)
言わずと知れた、
彼女が通学路や校庭周縁に設置した防犯カメラ or各種センサーから、
何か引っ掛かったぞと通知して来たのかなと
期待、もとえ案じたゆえのやりとりだったが、

 「そういうのじゃないですよ。」

通話じゃなかったのでと耳へ当てずの画面を見ていた平八が、
モバイルをクルンと返し、白百合さんたちへも見せたのは、
メールとそれへ添付されてた写メ画像であり。

 「あ…☆」
 「可愛いvv」

目の前にいるお友達が、ちょっぴりおめかし、
よそゆきのワンピース姿で微笑っている画像は、
あとの二人を“わあっ”と一気に喜ばせる。

 「珍しい。」

 「だよねぇ、
  こんな判りやすいフリフリのワンピは
  滅多に着ないのに。」

どちらかといやベビーフェイスの平八は、
襟ぐりや胸元にちりめんみたいなシャーリングを利かせたカットソーや、
更紗仕立てのブラウス、
襟や袖口にファーの縁取りがついたショートコート、
フレアスカートやマント風のポンチョなどなど、
普段からもガーリーないでたちが多いものの。
写メとして送って来られた添付画像では
アイドルユニットがステージで着そうなタイプの
スクエアカットになった襟の周りだの
袖口だのに、
ふわふわ波打つオーガンジーのフリルがいっぱいで。

 「まあ静止画像では分かりませんが。」

問われた平八は、だが、
特に照れるでなし、てへへと嬉しそうに微笑っており。

 「これって実は、このお招きの場で着せてもらった
  新素材のドレスなんですよ。」

 「新素材?」
 「???」

はいなと頷き、
一応は部外秘だからか周囲を見回してから、
やや声をひそめると、

 「好きな色柄に変化させられるシルクで作ってあるんですvv」
 「おお。」
 「…☆」

これまでにも、例えば柔軟なグラスファイバーを編み込むとか、
湿度や温度で様々に色が変化する発光素材で染めるとか、
いろんな方式でやってみた人はおりますが、

 「これは体温で色が変わるし、
  何と甘い芳香も滲み出すという、
  ロマンチック極まりないドレスだそうで。」

 「芳香もって…。」
 「〜〜〜。」

それはちょっと…どうかなぁと、
あんまり賛同は出来ないと感じたからだろう。
白百合さんも紅ばらさんも同じよに、
口許がやや引きつったのが平八には面白い反応だったようで。

 「まあ、フレグランスは好みがありますからね。」

今いろんなのが流行の洗濯用の芳香柔軟剤でも、
好みじゃあないのを使ってるお隣さんのせいでとうとう不眠症になったと
お医者へ訴えた人がいるのだそうです。

 「そか、工学系の。」

 「はい。
  教授たちの新年会にほんの先日呼ばれたもんで。」

招待してくれた博士のお一人が、
そのおりに撮られた写メを送って来たのだそうで。

 「素材系とか、関心あるんですよねぇ。」

電脳小町として名を馳せている彼女だが、
実をいや、日頃もどちらかというと、
プログラムを練るより、
ドライバーだのハンダだのをいじって
アイテム用のあれやこれやを組み立てる作業のほうがお得意。
それがどうして“なので”かは、
金髪娘らにはちょっと判りかねる文法なのだが、

 「こういうものを思いつける発想の人って凄いなぁとvv」

頬に片手を添え、わざわざうっとりするのへも、
判った判ったとしか
言い返せなかったりするのだが。

 「…米、パーマ?」
 「はい?」
ふと、紅ばらさんが
画像の中の平八へ、細い指先を当てて見せ。
言葉少なな言いようなのへは、
白百合さんが どれどれと同じようにのぞき込んでから、

 「あ、ホントだ。」

あっさり納得に至るところが相変わらずの以心伝心。

 「ヘイさん、髪がふっくら広がってるじゃない。
  それで“パーマ当てたのか?”って。」

 「ああ。いやいや違いますよう。」

言われてみれば、
写真の中では裾に向かってややふわりと広がってる彼女の髪だが、
今の今、目の前にいる平八は
いつものみかん色の猫っ毛を
肩先に触れるかどうかという長さにしたまんまのストレート。
普段のお手入れも念入りにしておいでの彼女なだけに、
1日だけのセットくらいじゃあ傷まぬかとも思えたが、

 「これって静電気のせいですって。」
 「静電気?」

途端に“やだぁ”と肩をすぼめ、
久蔵の背中の後ろへ隠れたそうになった七郎次は、
実はいわゆる静電気体質だそうで。
まずは“ごめんあそばせ”と軽く体当たりしてからでないと
建物も車も ノブに触れられないくらい。
そんなせいか、
聞いただけで平八自身が帯電しているように見えたのか、
ササッと逃げた様子が何とも可愛らしくって、
今度はひなげしさんと紅ばらさんでくすすと微笑ってしまったほど。

 「同じパーティーにいらしてた別の博士が、
  ほら、子供の遊具で エアハウスっていうんですかね、
  空気で膨らませる家型のドームの中に、
  ポップコーンを浮かせて“コーンの雨だぞ”なんていう
  なかなかファンシーなアトラクションを披露してくれたんですよvv」

 「???」

 「それって、ポップコーンマシンを
  吹き込み口にセットしただけなんじゃあ。」

脱穀用のコンバインよろしく、
勢いのある噴射風で出来る端からポップコーンを降らせただけとかと、
七郎次が口にしたものの。
人差し指を立て立て、
チッチッチッと横へ振ってみせた平八曰く、

 「そこへの静電気ですよ。
  本当にポップコーンが宙をふわふわ浮き上がってて、
  来ていた子供たちが まあまあはしゃいだはしゃいだ。」

グミやm&mチョコまでなら浮かせられるそうですよと、
にっこり微笑ったひなげしさんだったのへ。

 「食べ物が浮いたり降って来るなんて
  せいぜい童話の世界のお話だったのにね。」

今や現実にやってしまえる人までいるとは、科学の世界って半端ないと。
久蔵の肩へ両手を乗っけて掴まったまま七郎次が感嘆し、

 「…ヘイさんのお知り合いって相変わらず凄い人だらけなんだねぇ。」

 「……。(頷、頷)」

ポテチの蝶々…と久蔵が呟いて、
あ、それアタシも見たい!と、七郎次が追従よろしく手を挙げる。
せっかく麗しいお嬢さんたちだというに、
もう心に決めた人がいるからだろか、
案外と“花より団子”なタイプのようでして。
お外の寒風も何のその、
帰りは“八百萬屋”に寄ってってくださいな、田舎汁粉が半額デーです、
おお それは行かねばと、
今から微笑ましい約束をし合っておいでの
頼もしさだったそうでございます。


  他のお嬢様がたには聞こえないようにね。(苦笑)




  ● おまけ ●


静電気がおっかないという七郎次だが、

 「勘兵衛さんのあの髪って、
  冬場は静電気起きやすそうな気がしますが。」

彼女が前世からの足掛けで好いたらしいとしているお人は、
癖のある長っとろい髪を背中までたらしておいで。
それをふと思い出したらしく、
お昼時に無人の美術室にてお弁当を開きつつ、
平八が何げに訊いた一言へ、

 「それが案外と、
  しっとりしていて大丈夫というか平気…というか、
  いやあのその。//////////」

なんてことないトーンでお返事を仕掛かり、
え?と、
ひなげしさんや紅ばらさんのお箸が止まった気配を察してから、
ごにょりと語尾がふやけてしまった白百合さんだったのは
言うまでもなかったりして。(笑)

 「前世でもぞもぞし合った覚えからでしょうかね、あれ。」

 「それか、此処最近 耳掃除でもしてやったか。」

 「な…っ、久蔵殿まで何言いますかっ!//////////」

紅ばらさんの大胆なご意見には、
実はひなげしさんまでもが
思わず傍らの美人さんを二度見しちゃったらしく。

 “…まさかとは思いますが、
  榊せんせえ、そこまでやってあげてるとか?”

 “それで静電気が起きたってですか?”

ややこしい人たちです、相変わらず。




    〜Fine〜  15.01.20.



  *静電気体質は もーりんもで、
   ドアノブとの相性が最悪ですし、
   テレビ画面の埃をティッシュで拭うのが
   怖くてしょうがないです。
   まだブラウン管のテレビだからかなぁ。
   液晶やプラズマ薄型のテレビでは
   冬場の“パチン☆チクチク”はないですか?
   物凄く痛いのよ、あれ。


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